第7回山口大学研究推進体「ストレス」公開フォーラムを開催しました
2103年12月2日(月)、山口大学医学部霜仁会館3階多目的室にて第7回山口大学研究推進体「ストレス」公開フォーラムが開催されました。まずは、坂井田功医学系研究科長より、山口大学医学部の特徴を生かして益々研究に邁進していただきたい旨のご挨拶をいただきました。その後、「転写調節による細胞機能制御」というテーマで、6名の先生にご講演いただきました
瀧井良祐先生(医化学)は、「タンパク質ホメオスタシスを担うエピゲノム適応機構」という題目で発表されました。HSF1と直接的に相互作用するタンパク質として同定された転写因子ATF1が、糖や脂質代謝に関わるにかかわる遺伝子群の転写制御に関わるだけでなく、新たな機能としてHSF1-ATF1が転写複合体を形成することで、エピゲノムなどの調節を介したプロテオスタシス制御に関わっていることを示されました。
本田健先生(分子薬理学)は、C2C12細胞を骨や筋細胞に分化誘導するため必須な新規タンパク質PDZRN3の脂肪分化における役割について発表されました。3T3-L1細胞においてPDZRN3をノックダウンすると脂肪分化が促進されることを示し、転写因子STAT5 やPPARを介する制御機構を示しました。
安達圭志先生(細胞シグナル学)は、「免疫細胞の機能制御を介した新たながん免疫療法」というテーマで発表されました。CAT-T cellを用いたガン免疫療法の現状と課題について紹介され、先生らが開発中のエレガントな遺伝子発現系を用いたレトロウイルス遺伝子導入による長期生存可能なCAT-T cellについて報告されました。
太田康晴先生(病態制御内科学)は、時計関連遺伝子である転写因子DBP/E4BP4による糖代謝の調節機構について発表されました。先生らの研究で、糖尿病モデルマウスにおいて時計関連遺伝子DBP/E4BP4とその標的遺伝子ARNT発現制御に異常があり、実際にE4BP4の調節異常が耐糖能異常を導くことをみごとに示されました。
西本新先生(器官制御外科学)は、「大腸癌におけるJAB1を介した転写調節の役割」というテーマで発表されました。JAB1が転写因子STAT3或いはHIF1と相互作用することで両転写因子のDNA結合活性が増強されること、また、抗アポトーシス関連遺伝子の発現が上昇することを示し、大腸癌における抗がん剤抵抗性獲得のメカニズムであることを示唆されました。
田村功先生(産婦人科学)は 、ヒト子宮内膜間質細胞における脱落膜化関連遺伝子とヒストン修飾の相関について、次世代シークエンサーを用いたChIP-seqとRNA-seqという最新の手技によるゲノムワイド解析を行われていました。脱落膜化関連遺伝子群の遠位のエンハンサーの重要性や、ヒストン修飾の変化とmRNA発現レベルの上昇に相関があることを示されていました。
いずれの先生の発表も大変興味深い内容のものばかりで、質疑応答の時間には、様々な分野の聴講者たちから分子基盤から臨床応用に至るまで幅広い視点の多数の質問やコメントがあり、大変有意義な討論の場が持たれたと感じました。最後に、本研究推進体代表の中井彰教授より、5年近くにわたる活動の概略と今後の展開につてお話がありました。同じキャンパスで活躍する若手研究者を中心とする議論の場が、今後も継続することを願っております。
(高木栄一、医化学分野)